じんじんする日々

気をつけているつもりでも、その「つもり」が及ばないところで、じんじんは日常的に生産されてしまう

もうちょっと深入り、ハーグ条約

 はてブでこんな記事を発見↓

 

 

数日前にたまたま、ハーグ条約関連の日記を書いたところだったので、 興味をもって記事を読みました。

(↓こちらが、そのたまたま日記です)

jinjin.hatenablog.com

 

日経の元記事は、一読ではちょっとわかりにくいところもありますが、このイシューに関して知識がない人にも、伝わりやすいように親切に解説されています。……ということも、二読、三読して、ようやくわかるようになったのですが。

この記事の主題は、ずばり一行目の「日本が『国際的な約束を守っていない』と批判されている」というところですね。さすが新聞。わかりやすいです。

いや、皮肉です。

というわけでもないのですが、結局モヤモヤが残っていたのも事実で、後半に「3月、注目される最高裁判決があった。ハーグ条約に基づく子の返還命令を拒否する母親に、米国在住の父親が引き渡しを求めた上告審だ」という記述が出てくるのですが、「どうもこの案件が、一読目のモヤモヤを晴らすための鍵になりそうだ」とピンときたので、元記事を離れてちょっと調べてみました。普段はそんなに熱心にサーチしたりはしないのですが。

そしたら、Japan Times にまとまった報道を発見できました(英語ですが)。

Hague Convention - The Japan Times

www.japantimes.co.jp

 

どうもこの注目の案件では、もともとアメリカに住んでいた日本人カップルが、2008年ごろから仲違いを始め、2016年1月に、奥さんの側が当時11歳だった息子さんを、夫側の了承なしに日本に連れて帰ったというのが問題になっているようです。

ハーグ条約では、16歳未満の子供を、相手親の同意なしに連れ出した場合は、その相手のリクエストが期限内にあれば、原則として元の国へ連れ返すことがルールとして定められています。

もちろん例外規定はあって、たとえば子供が「いや、ぼくはこっちに残りたい。あっちには行きたくないんだ!」というような場合には、返還しないことを裁判所が判断することができるそうです。

この注目の案件でもそこのところが議論になって、一度は息子氏が「お母さんと日本に残りたい」というのを尊重して「返さなくてもいい」という判決が出たのですが、最高裁にいったところでそれが却下され、差し戻しになったということです。

これに対し最高裁は、息子の意思について「11歳で帰国して母親に依存せざるを得ず、母親の不当な心理的影響を受けていると言わざるを得ない」と指摘し、本人の自由な意思とは言えないと判断した。
ハーグ条約:「子の返還拒否は著しく違法」最高裁初判断 - 毎日新聞

 

で、結局、このお母さんは上告せず、判決が確定したようです。息子さんはアメリカへ「返還」されることになりました。

そんなこんなを知ってから、元記事に戻ると、理解が進むように思いました。

ハーグ条約の取り決めがいいかどうかは、これまた別問題であるが、法は法である。裁判所で裁いた案件が、執行されないっていうのはいかんのじゃないのか? 国のあり方として落第なんじゃないかい? とアメリカさんが言っとるということのようです。

まぁ、そこは、まぁ、正論でしょう。

 

でもなんか、手放しで賛同できない心のわだかまりが残ってしまうのは、あたいがブックマークで書いたように、

ハーグ条約「日本は不履行」 子供連れ去り対応迫る  :日本経済新聞

国籍に表れるように、日本は血統主義で、米国なんかは出生地主義という差もある。米国から見たら国外へ連れ去られた子供を「連れ戻す」であるが、日本から見たら外地に育った子供(例、長男)を「連れ帰る」となる。

2018/08/29 06:00

b.hatena.ne.jp

みたいな見方が、特に日米間の場合、出てくるからじゃないだろうか、と考えました。

アメリカでは、一方の親の同意のない子供の移居を「是即、連れ去り」として重大視、犯罪視、重大犯罪視するようですが、日本では、なんと言いましょう、離婚時に単独親権制をとっているということもあり、「どちらかよりふさわしい方が引き取ればよい」というように考えることが一般的なんじゃないかと思われるのです。

つまり、日本的考えでは、「一方の親の同意のない子供の移居」も、場合によっては正義であるだろう、という見方になるということです。だから、アメリカ的な一方的な決めつけに違和感を持つのではないかと思ったのです。

 

さらに、Wikipediaで「ハーグ条約」のこと自体を探ってみたところ、

国別では、訴えられた国では、1位アメリカ286件(23%)、2位イギリス142件(11%)、3位スペイン87件(7%)、4位ドイツ80件(6%)、5位カナダ56件(4%)となっている。訴えた国では、1位アメリカ167件(13%)、2位イギリス126件(10%)、3位ドイツ107件(9%)、4位メキシコ105件(8%)、5位オーストラリア75件(6%)である。

というような実態もあるようで、訴える声が大きいアメリカさんでしたが、彼らはどちらかというと訴えられる側のキャラクターを強く持っているようです。

さすがは多様性のアメリカ、最初は、ゴリッパな正義を振りかざしているように見えたものでしたが、よくよく見てみると、その正義自体も諸刃の刀であり、ご自身がたくさん傷ついているということなのでした。

おしなべて見てみると、アメリカでも「子供の連れ去り、断じて許さん!」という正義漢によるシュプレヒコールよりも、「それでも私は連れ帰る」という個人の正義のほうが、強く、そして広く行き渡っているようであります。

 

だけども、法は法である。

裁判所で裁いた案件が、執行されないっていうのはいかんのじゃないのか? 

国のあり方として落第なんじゃないかい?

 

いや、まぁ、そこのところは、まぁ、正論なんでしょうけども……。