じんじんする日々

気をつけているつもりでも、その「つもり」が及ばないところで、じんじんは日常的に生産されてしまう

不思議なエンカウンターが2件発生!

娘を連れて公園にいくと、不思議なエンカウンターが2件発生しました。今日は夏みたいに暑い日でした。

1)鼻の頭から血が流れているおじいさん

ひとつは、信号待ちをしていたところに、鼻の頭から血を流しているおじいさんがやってきて、「タクシーを呼んでくれないか」という謎のお願いをされたということです。

私は、考えてみたら、タクシーの呼び方なんぞ知らないし、この得体の知れないおじいさんのために自分のアカウントを使ってUberを呼ぶこともしたくないので、アホなふりをして逃げ出しました。

おじいさんは、鼻の頭から血を流しているのですが、それはかすり傷程度で深刻ではありません。自分でもそう言っていました。ただ続けて二回も転んでしまって、タクシーを呼びたいので、411に電話してくれということでした。おじいさんの携帯を使って411をダイアルしてあげました。

411というのは、インフォメーションダイアルだそうです(今、調べました)。ここに電話してタクシー会社の電話番号を教えてもらうという手順になるんですね。

私は、そのあたりもよく知らないので、411にダイアルしたことで、おじいさんはなんとかなるだろうと早めに見切りをつけて立ち去ってしまいました。

我ながら、冷たいですね。いつかそういう緊急事態に遭遇したときに、緊急事態を解決するべくひと肌ふた肌脱げるようなまともな大人になりたいと、昔から思っていたはずでしたが、まったく叶えられていません。そのことだけ、よく確認できました。

しかし、おじいさんの形相がなんか異様で、新手の詐欺かなんかだろうか、と思ったのも事実です。おじいさんと会話している間中、警戒心が発するアラームが鳴りっぱなしでした。

まぁ、そうやって自分を正当化したいのだけど、ともあれ、私はその場を立ち去ってしまいました。心の冷え切った男じゃないか。娘にもそんな姿を見せてしまいました。

おじいさんが無事であることを祈るばかりです。

2)日本語がペラペラの黒人さん

公園に到着した我々は、木陰に入って(今日は暑かった)、持参した水筒の水を飲みました。木陰で風が吹くと気持ちいいね、なんて言いながら、私はなんとか心を落ち着けようとしていました。

娘も似たような感じだったのかも知れません。5分、10分ぐらいベンチに座ったところで、「なんか遊びたくないから、家に帰ろう」と娘に言われました。

蛙の子は蛙、であり、娘も警戒心が強い子供なので、ほかの子供が遊具を使って遊んでいるのを見て、そこへ割り込んでいくのを躊躇するというのはよくあることなのです。

普段はそれでも、家に帰ろうなんて言い出すことはなかったのですが、それを聞いた私はそれを不思議に思うこともなしに、「じゃあ、そうするか」と二つ返事で応答しました。

「じゃあ、ちょっとぐるっと遠回りして帰ろうか」

そこで私の日本語教育スイッチが入りまして、普段は英語中心で会話しているのですが、執拗に日本語で話しかけるというトレーニングをし始めました。

前を歩くカップルが、ゆっくり歩いている。左側から回って前へ出ようかとしたそのときに、「Hey! Do you remember me?」などと声を掛けられました。

カップルの男の側が私に声を掛けてきたのです。確かに、見覚えのある顔をしていました。

たしか、以前、学校で見かけたことのある男で……えっと……

などと考えていたところ、「I used to work for you guys」などと言われました。

混乱しつつ、やっぱり思い出せないので、作り笑いをしながら、「Oh, great to see you」とか言ったか言わなかったか、こちらも先ほどのエンカウンターと同じように、深い関わり合いを避けるようにして立ち去ってしまいました。「Have a great evening!」とかだけ言い残して。

少し歩いたところで気がつきました。

ああ、前の職場で働いてもらった短期スタッフのひとりだ!と。

日本チームの一員として働いてもらった人で、日本語がベラベラの黒人さんというレアな存在だったのでした。個人的にも好きな人で、ああ、すぐに思い出せないことをしっかり伝えて、もっとお話できたらよかったのに、私にはそこで踏ん張る勇気がありませんでした。

実は今でも名前を思い出せないでいるのですが、そういう自分の心の足りなさが知られてしまうのが嫌で、恥ずかしくて、その場から逃げ去ってしまいました。

ああ。残念なことでした。そして、そこから見える自分は、とても残念な人でした。

    *   *   *

こういう対人の場面が苦手だな、ということにようやく気がつきました。特に突然の、向こうから知らない人に来られるというパターンのやつが(二つ目のほうは知っている人だったのですが、記憶力が及ばず、即座に思い出せなかったのです)。

それを防衛意識などとフレームすれば、まだ聞こえがいいような気もしますが、その高すぎる防御力(知らない人怖い)のせいで、自分の望むように冷静に行動できていないので、「この性質、いややなぁ」と思っとるというわけです。