ちょっと待ってくれ
ちょっと待ってくれ。
急に入ってきた面接のために忙しくなってしまった。
ありがたいことだけど、予定していた学校の勉強も後回しになっている。
またすぐ戻る。
いや、戻らなかったら良い便りだと思ってくれ。
吐き出すことにより、取り入れることができるのである
シャンプーのプッシュ式ボトル、あれはどういう構造になっていると思う?
頭を押すと、シャンプーがペロッと出てくるようになってるけど。
いや、俺も詳しいわけではないんだけど、想像してみたことがあるかっていう話。
ボトルの頭の部分を押し下げると、外に出ていた管のところが内側に押し入れられて、その分単純にボトル内の容積が減るわけだね。
外から観察しても、プッシュインしたときには体積が小さくなっているわけだから、直感的にもわかりやすいでしょ。
で、その容積のマイナス分を処理するには、この場合、シャンプーと空気で構成されている内容物をそのマイナス分だけ、
1)圧縮する
2)外に逃がす
というふたつのやり方があるだろうけど、プッシュ式ボトルの場合は、2のための通路が用意してあって1より圧倒的に簡単だから、2が実行されているというわけだね。
出口が用意されてなくて、完全に密閉されている状態だったら、ボトル自体が拡張するか(壊れる場合も含む)、まったく押し込めないか、内容物が圧縮されるかのどれかになるんだろうね。
まぁ、それだけの単純な構造と言えると思う。
単純じゃないと、大量生産していけないしね。
で、もうひとつ重要なのは、押し込んだヘッド部分が元の位置に戻るというところ。
そのときに外気を取り込んで、次のプッシュインに備えているというわけだ。
これを実現しているのは、スプリングパワーでしょう。
バネを入れておけば、プッシュインすることはできるけど、手を離せば元の位置(これも可動域によって限界を設定してある)に戻る。
押されて、内容物を吐き出したあと、私はすぐに次に備えます。
だから連続プッシュだって、可能なのです。
それに、連続プッシュをしなくたって構わないのです。
なんて健気なんでしょう、などと思ってくれなくても構いません。
そんなことも願ったりしないのですから。
と身近な生活用品が少し愛おしく感じられたかもしれないところで、答え合わせです。
ググってみるとこんなサイトが。
読んでみると、私は上下の「弁」の存在と、もっと言うとポンプ内タンクの存在を想像できていなかったことがわかります。
ポンプ内タンクを採用しないと、加圧される内容物がシャンプー&空気になってしまい、空気のところが圧縮されて、吐き出し効率が下がることになるのでしょう。
また、ポンプ内タンクを採用して、その内部に逆T字型の押し下げ棒を導入してやれば、「外に出ていた管」以上の容量を動かし、押し出すことができるようになるのですね。
私の素人考えより、単純じゃなかったですね。
口調が変わってしまいましたね。
でも、そんなことはどうでもいいのです。
シャワーのなかでの思いつきが、こんな思わぬ形になってくれたのだから、それで十分なのです。
今日のところは。
群青とオレンジのアメリカンロビン
今年のサンクスギビングはこぢんまりとしたものだった。
家族だけで食卓を囲んで、友人を招いた年の思い出話をしたりした。
昼過ぎにはターキーとビールでお腹いっぱい。
膨れ上がったお腹をどう置いても落ち着かず、さてどうしたものかといって、ふらふらとベランダに彷徨いでた。
ここ数日は季節外れの暖かさが戻ってきていて、今日も家の中では11月下旬らしからぬ気温になっていたのだけど、外は意外と風が鋭かった。
空気はしっかり秋の暮れらしかった。
そんなことを思っていると、向かいの電線につと一羽の鳥がやってきた。
群青とオレンジのアメリカンロビンである。
カラフルで主張の強いアメリカ的なスズメであるらしい。サイズもふたまわりくらいでかい。
一羽で来て、怯える様子もなく、じっとこちらを見てくる。
なんだい、エサでももらえると思ってるんか。
なんて心の中でつぶやいていると、
「おい、お前。やりたいことをやるんだぞ」
急に、そんなメッセージを飛ばしてきた。
「わかってるんだろうな。やりたいことをやるんだぞ」
ちょうど、「前の仕事では、仕事を極めることは、自分と切り離されたロジックで稼働する別人格を自分の中に育てていくことであった」などと考えていたところだった。
会社(いや、顧客)の考え方、ポリシーをよく理解して、外側の事象を格付けしていく。
そこで良しとされている事象は、俺個人でも本当に良しとしてしかるべきことなんだろうか。
私はそれに続く、「いや、そうではあるまい」という心の声が次第に大きくなっていくのを邪魔臭く思っていた。
まぁ、それくらいの意識の乖離は、現代社会では当たり前のこと。
俺だってそのくらい飼い慣らせる。
そういってがんばっていたのだけど、その仕事から離れて今俺は、その論理を脱ぎ捨てたままでいられることを快く思っている。
結局、それが本音みたいだ。
「おい、お前。ちゃんと約束しろ。やりたいことをやるんだって」
はいはい。やりたいことをやるよ。せっかくの、一度きりの人生なんだから。
「そうじゃない。ちゃんと誓え。本気でやるって」
ロビンの目蓋の縦線に、クッと力が入ったように見えた。
はい。やります。
本気でやります。自分の好きな思考を炸裂させられるように、白紙のスペースに向き合っていきます。
人生も、最近はまじめに取り組んできたつもりだったんだけど、思うようにはうまくいかないので、もう、好き勝手やろうかなと。
狂人のようにやってやろうじゃないかと。
なんてお前、そんな度胸もねぇだろ?
と、鳥でなくても訝る気持ちも当然わかる。
でも、そんなに気負ってやろうという話でもない。
ただ、社会規範を恐れずに、自分勝手なロジックでぶんまわしてみたいってだけ。
そういうことをやっていきます。
決心を伝えたので、ロビンにくるりと背を向け家の中に戻ろうとすると、エサをもらえないのが確定したからか、群青オレンジもちょうど次の空へと飛び立っていった。
アメリカのサンクスギビングは、日本の正月みたいな雰囲気がある。
なんだかちょうど、新しい年の決心をしたような気分になった。
飛んで帰りたい
「ブログ始めたんだ」と友人が言う。
「へぇ、すごいじゃん」と俺。
「読ませてよ」という言葉も思いつくのだけど、そこまでのお世辞は言えない。そんな信用は置いてない。
代わりに「いつからやってんの?」と聞いた。
「おとといから」
「なんだ。本当に始めたてじゃん」
「そうだよ。昨日は書かなかったし」
「そうか。じゃあまだひとつの点だね」
この話、「読む」という選択肢を取りたくない俺には、ただコートの真ん中にボールを返すというだけの気のないラリーを続けていくよりほかに対処のしようがない。
「どんなこと書いたの?おとといのブログ」
「日常のことだよ。ドライブスルーでハンバーガー注文できて嬉しかったとか」
「ははは。ほのぼの系だね」
「うん」
少しの沈黙。
「本当はね。子供が嫌いだってことを書いたんだ」
「おお、だいぶ毛色が違う」
「ひいたでしょ?」
「うん、ちょっとひくかな」
意味をつけすぎないように、淡々とした調子で言った。
「子供全体が嫌いなんじゃなくて、近所の子供ことなんだけどね」
「うん」
「その子も、なにか嫌がらせをしてきたとかじゃないんだけど、なんていうか、助けてくれなきゃイヤイヤイヤンという態度が生理的に嫌いな感じ」
「なるほど」
「それで、自分が子供を全般的に嫌いなのかどうか考えてみたくて書いたんだ」
「ちょっと、読みたくなってきたな。怖いもの見たさで」
「でも読まない方がいいと思うよ」
「分析結果が悲惨だった?」
「どうだろう。ただ、全部正直に書いちゃったから」
「結論は出たの?子供が嫌いなのかどうか」
「ひとまずの結論は出たかな」
「どうだった?」
「結論はつまらないものだよ」
友人はここでマスクを外して、
「人による、っていうだけ」と言った。
「まっとうだね」
と平静を装って返答したけど、友人の顔がいつのまにか鳥のようになっていたので、内心とてもビビっていた。
口元にツヤツヤなものが突き上がっている。
木材で作った彫刻のようにも見える。それは短いが鋭い。
どうやって話を切り上げて、この場から立ち去ろうか。俺はそればかりを考えるのだった。
強い息吹には強いエネルギーが宿るという
ヨガの先生が、「インドには強い息吹には強いエネルギーが宿るという考えがあります」 と言った。
それを聞いた俺は、次のインタビューで使えそうだと思った。
現在俺は絶賛就職活動中。しかし、英語のインタビューがむずかしすぎて、もう一年近く状況を変えられないでいる。
もともと俺はインタビューみたいなことが苦手だ。
メンタルが弱くて、そういう場面でのドキドキが止まらないからだ。緊張のせいで思考能力が落ち、パフォーマンスも落ちる。
対策として、問答への準備をしっかりするというのがある。
想定される質問への答えはしっかり用意しておく。
本番では、一言一句違わずに言うというのもよくないので、120%〜150%分の回答を用意しておいて、それの7割〜8割を即興的に取捨選択して組み立てるようにしている。
もちろんその部分も成功するまで磨き上げていくわけだが、今現在は、作家としての自分よりも、パフォーマーとしての自分のほうが足を引っ張っているように思う。
「何を話すか」よりも「どう話すか」のほう。
そんな文脈にいたので、ビデオで繰り返し聞いているはずのヨガ先生の説教が、今回はじめて心に留まったのだった。
そんなことがありつつ、
先日ひさしぶりにファストフードのドライブスルーを利用した。
昼過ぎの時間がよかったのか列はなく、すぐに自分の順番になった。
古いスピーカーがガシャガシャと汚い音を立て、店員の言い慣れすぎてつんつるになった言葉を伝える。
「こんにちは。ご注文をどうぞ」
順番待ちがなく、考える時間もなかったので、こういう状況だと「えーっと、うーっと」などと言って長く考えることも多いのだけど、この日は食べたいものがあってきたので、そういう失態は演じなかった。
オーソドックスな1番のコンボをコーラで頼む。チーズバーガーで。
瞬間、軽い緊張が走る。
うまく伝わるだろうか。
メンタルの弱い俺とはいえ、ごく軽い緊張である。
あ、そうだ。強い息吹を使おう。
インドの奥義をいいタイミングで思い出せた。
「1番のコンボを、チーズ付きで、コーラでお願いします」
言えた。
はじめてのことなので若干ぎこちなくなったが、バシーンと力強く言えた。
店員が言う。
「1番のコンボを、チーズ付きで、飲み物はコーヒーでしたね」
いや、ちがうちがうちがう。
「ちがいます。コーラです」
「おお、コーラですか」
ということがあった。
まだまだ修行ははじまったばかり。
道のりは長いが、地道にがんばっていくしかない。
吉本興業騒動の個人的な感想まとめ【追記あり】
吉本興業騒動の個人的な感想まとめ。
長い長い会見をふたつも見たので、何か書かないと気持ちが収まりませんでした。
【追記:実は、吉本興業の会見は三時間ちょいしか見ていませんでした。今、残りの二時間強を見終えたので、事実関係で間違って認識していたところに補足を入れていきたいと思います。ああ、それにしてももう、会見が終わってくれてありがとうという思いでいっぱいです】
そもそもの罪はなんなのか
- 反社会勢力との関係
- 事実隠蔽
これはそれぞれ、入江氏、宮迫氏のおイタでした。
ただ、話はそこで収まらず、この問題の根っこは、吉本興業の企業体質にあるんじゃないか、という話に膨らんでいきました。
- 吉本興業と「反社」のつながり
- 吉本興業の労働環境
- 岡本社長のパワハラ
では、それぞれ、もう少し詳細に考えていきたいと思います。
反社会勢力との関係(発端)
発端になったのはフライデーのスクープで、2014年12月、宮迫氏をはじめ複数の吉本芸人が入江氏の仲介により、振り込め詐欺グループの誕生日会兼忘年会に出演していたというもの。
問題のひとつは、それが、所属事務所を通さない活動であったということ。
そのために、金銭の授受があった場合は(あったわけですが)、税金未払い問題や、はてはマネーロンダリング(つまり詐欺行為の一部)に加担したというような話になりかねないということがありました。
事務所を通してないので、税務申告や反社チェックなどが十分にできなかったんじゃないか。いや、そもそも税務申告や反社チェックをしないで済ませるためにそのような仕事の受け方をしたのではないかという疑惑が出てきました。
また、これは吉本興業内部のレベルですが、会社に無断で行う営業活動が社内ルール的に問題になるのかどうかという論点もありました。まぁ、そんなことはどうでもいいでしょう。
ここで、私がもっとも重要だと考えるのは、反社組織との関わりがどのようなものなのかという点です。
- 相手が反社組織だという認識はあったのか。
- 付き合いは継続的だったのか。
- 今回のことは氷山の一角じゃないのか。
この三点がぜんぶ黒だとしても、簡単には「黒でした」とはならないことは小学生でもわかることですが、現在表に出てきているところでまとめると
- 相手が反社とは知らなかった。エステ会社だと思ってた。
- 付き合いは、入江氏以外は継続的ではなかった。
- 今回のことが氷山の一角ということでは断じてない!
ということだとなっていますね。
だから入江氏も「知らなかった」と言っているものの、振り込め詐欺グループのメンバーと「継続的に」「より近しい人間関係構築をしていたこと」、またその上で、「相手が反社であることを見抜けなかったこと(もしくは相応の対応をとれなかったこと)」を勘案して、吉本興業が早期に契約解除という判断をしたのは、妥当だったと思います。
ただ、現在外に出ている話が本当であれば、ほかのメンバーに罪はないだろうと思います(この部分では)。なぜなら、
- 相手はエステ会社を名乗っており、エステ会社としての実態もあった。
- 当該詐欺グループが逮捕されたのは、事後の2015年6月である。
- 事実関係が明らかになってからは、取引を行なっていない。
からです。その事実関係が明らかになったときに、警察に届け出なかったという落ち度はあるでしょうが、吉本芸人もこの詐欺グループに騙された被害者であると見なすこともできるだろうと思うのです。
いや、なぜそうしないかがわかりません。
入江氏だってそうです。
「詐欺グループの手口がこれこれこのように巧妙で見抜けませんでした」「事実判明後はこのような対応をとりました」「そしてもう付き合いは絶ちました」という説明をすれば、ある程度の世論は説得できるんじゃないでしょうか。
で、こういうケースでは業界の口契約という慣習が災いするので、今後は、暴力団(反社組織)排除条項を含む契約書を交わすように改めます、という対応をとればいいと思うのですが、違うでしょうか。
結局、コトを大きくした割に、会社の取り組みとしてそういう根本的な解決策は提示されていないので、なんだい、そこを回避するための立ち回りだったのかい、という気もしてきてしまいます。
宮迫氏による事実隠蔽
これはね、いかんですよ。
調査段階における事実隠蔽ですからね。罪にあたります。もちろん、公的組織(警察)による調査ではなく、私的組織(吉本)による調査だったので、日本国の偽証罪にはあたりませんが、組織内における罪は生まれます。
そりゃ、怒られますよね。
でもまあ本人も罪を認めて、あれだけ公に、社会的な制裁を受けて、ごめんなさいしてますから、それでいいような気もします。
いいじゃないか、もう十分反省もしているようだし、罪も償ったということで。
しかし、それを最終的に判断するのは吉本興業でしょう。
第三者に、「許してやりましょうよ」といわれて、「まぁ、仕方がない。今回に関しては許してやろう」とやるのは吉本の役目・権限でしょう。
吉本側の会見でも、藤原副社長もでてきて、「あれはショックだった」「パニックになった」というようなことを言っていましたが、そのときの会社側の衝撃・被害の説明が十分でなかったように感じました。
藤原副社長のフォローはグッドでしたが、それでもあの場面のパフォーマンスの重要性を考えると、役者が十分ではありませんでした(特に2回目のフォローパフォーマンス)。
所属タレントが反社会的な行動に関わったようなので、一方で当人を守りつつ事情を聞きつつ、他方で関係各所への謝罪・緊急対応に奔走しておったところ、他所から続報として伝わってきた話では、どうも当人らがわしらに嘘を話しておったということで、わしらももうそりゃあ、ブチ切れました。
睡眠時間を削って尻拭いに駆けずり回ってくれているスタッフを、目の前で騙していた、裏切っていたということですからね。あのバカもんは。緊急対応ということは、残業ですよ。そりゃそうでしょう。あの頃は、スタッフも疲れがピークに来ていたところで、それでも大義を胸に、仕事への、お笑いへの情熱だけで持って、精神論で頑張っていたところにあの仕打ちです。大ショックですよ。骨抜きです。すぐには切り替えられません。心はへなへなです。
社長としては、このチームが次の一歩を踏み出すためには、嘘をついていた当人に厳重注意を与える必要があります。厳しく叱責する必要がありました。それが度が過ぎていたと言われれば、そうなのかもしれません。ただ、彼らの後始末に奔走してくれていたスタッフの士気を考えると、「オッケー、了解」と簡単に受け流すわけには、どうしてもいかなかったのです。
少なくともこの件に関しては、当該タレントの言説に信用が置けなくなってしまったので、あのタイミングですべてを任せて会見させるというわけにもいなかったし、会社の知らないことがまだあるんじゃないか、何が隠れているのか、事実関係のより確かな調査・把握・裏取りが必要になりました。
しかもちょうどそのタイミングで、フライデーの続報が出て、更に多くのタレントが関わっていたことが公になりました。それだって、残念なことに、内部から伝えられたわけではありませんでした。それで、さらにこちらの態度が硬化してしまった、慎重にならざるをえなかったという部分はあったかと思います。
以上、想像
というような話には、多くの人が納得できることだと思います。
ただし吉本興業はそこの説明を十分にすることができませんでした。当該芸人にも、今回の会見の視聴者に対しても。
吉本興業は、マネジメント会社と所属芸人の次元だけではなく、総合エンタテイメント会社として、テレビ放送局やその他のクライアント、スポンサー、株主、6000人の所属タレント、従業員、視聴者、ファンの全方位に責任を持つ一大企業体としてのビジョンでもって、何が優先事項で、どういう順番で対応していかなくちゃいけないと考えているのか、十分に周知・共有することができていなかったと言えましょう。
会見を見る限りでは、そこは絶望的なほど、力量不足であったかのように見えました。巨大組織としては脆弱な体制でした。
吉本興業と「反社」のつながり
で、これです。
本当は、世間にとってもこれが一番の関心ごとなのだと思いますが、結局、メスは届きませんでした。今回の騒動の範囲では、十分に明らかにならないもののようです。
吉本興業は上場企業であった2008年から本格的なコンプライアンス強化に乗り出しています。それで「今はもうまっさらキレイだ」という話は、にわかには信じられないですが、今回の一件はそれで出てきた以上のものを疑うための十分な根拠にはできないみたいです。
まぁそれも当然の話です。タレントイメージを売り物としている企業としては、反社とのつながりというのは死活問題ですから、すでに表に出ていない話を自ら俎上に上げるなんていう無用のリスクは取るはずがないからです。
「これこれこういう状況があって、ややもすると反社会的組織と関係を持ちそうになったが、このように対応して未然に防いだ」
そんな事例を紹介することも不可能ではないだろうけれど、そういう似たケースはいくらでもあるんじゃないかと、さらなる憶測を呼び込んでしまう恐れがあるでしょう。
それに、そういう場合は、実際にいくらでもあるのが本当だという可能性が強いでしょうしね。
真相解明、なんてことが可能だとしても、今回はまったくそこには及ばずに終わることでしょう。
吉本興業の労働環境
そして、ここに話が広がりましたね。
吉本ってブラック企業じゃないか。もっといえば、芸能界ってだいたいぜんぶブラックじゃないのか。
ここ最近、ジャニーズ事務所や、レプロエンタテインメントのことなどもあったので、そういう機運が高まっていました。
先ほどもチラッと触れたように、吉本興業の場合は基本的に芸人と会社の間で契約というものが存在しません。それゆえ今回の騒動でも、なにが契約違反と判断されて契約解除になり、なにがどう評価されてその措置が撤回されるに至ったのか、会見を経た今なお、直接的な質問&回答を経た今なお、不明瞭という状態です。
吉本興業の所属タレントが無断で直営業をしてもいいのか悪いのかも、はっきりしません。
今後は直営業に関しても相談できるようにしたいということでしたが、その場合は反社チェックをするにしても会社のリソースを使うわけですから、それが完全無料なのかどうかも気になるところです。
【追記:このあたり、後半を見たことでもう少し輪郭がはっきりしてきました。宮迫氏の契約解除は、反社パーティに参加したこと、金銭授受に関して虚偽の説明をしたこと、リーダーとして口裏合わせをしたこと、どうやらデマだった金塊強奪犯とのギャラ飲み記事が出てきたことなどを総合的に考えての判断だった模様。撤回のところの理由は何か言ってたけどわからず。直営業については今後は会社に報告せよ、ということになる。そういう文書にサインさせられる。だから無断ははっきりダメになる。その場合、どのくらいマージンを取られていくのかは依然不明。こちらからは以上です】
ほかにも、さまざまな芸人さんがテレビ番組やSNSを通じて、この「労働環境」の部分で声をあげていますね。会社の会見では、会社と所属タレントのギャラの取り分はざっくり言うと「5:5」か「6:4」というところという説明でしたが、さっそく「そんなわけねーだろ」という声が方々から上がっていますし、なによりそもそもそれが当事者に開示されていない、開示される可能性もないというのが問題です。
部外者の個人的な意見をひとつだけ書けば、タレントさんがある程度戦力になるようになったら、タレント契約として契約書を交わすという段階的なシステムの導入がいいのではないかと思います。
そうしないと他社に移籍してしまうという土壌が望ましいですね。
今は、取引先であるテレビ局村のみなさんに株式を持ってもらって、なんとかまだ業界の閉鎖性を確保しているようですが、そこには自由市場があるべきです。
自由市場があったって、所属事務所に対しての育ててもらった恩義などはなくなるものではないし、格安で契約更新する人もいるでしょうけど、格安で契約更新してますよということは明示的になるし、相互に特別な関係性で仕事をしているのなら、逆に市場価格以上の査定で長期契約しますよというケースも話題になってくることでしょう。
契約や待遇のあり方に関しては、まだ芸人さんタレントさんの間で不満がわだかまっているようなので、さすがに各事務所も何か手を打たないといけないという事態になるだろうと予測されます。
そういうことがちゃんと起こるようにするためにも、株式の談合的政策保有を廃止することが求められるでしょう。それが実現すれば、外部からの参入も容易になり、より多くの競争が生まれるようになるはずです。
ここは、日本企業に自主的な行動なんか期待できないので(悪口)、公正取引委員会の活躍が必要になるかもしれません。
あとあと、小さなことですが、2時間半も3時間半も休憩なしでぶっ通しで会見させるというのも非人道的です。終わりの時間がそこに設定されているならまだしも、トイレ休憩にも立てない状況でそれを全員に要求するというのは、おかしい感覚だと思います。これは記者の側も含めて批判したいですね。
そういう、人に優しい差配ができないところを見るに、吉本興業は従業員を守れない会社であり、記者らの反応を見るに、いまだに日本は基本的人権を守ることを大切にしていない、ひいては弱者を大切にできない社会なんだなという実感を強くしたのでした。
【追記:休憩、挟んでいましたね。都合5時間超に及んだ会社側の記者会見では、開始から3時間ちょい経ったところで「技術サイドからの要望もあり」という素敵な緩衝材を挟みつつ、10分間の休憩をとることをアナウンスされました。うまいですね。でもそういうアナウンスのうまさが要求されること自体、社会のイビツさの表れだと思うのですが、私もとことんまでケチをつけたいわけではありませんので、これは私の勘違いでした、ごめんなさいと書いておきます】
岡本社長のパワハラ
これも問題です。企業トップのパワハラは問題ですよ。武井壮さん。
会見中、岡本社長自身もパワハラ認定していましたが、それだけでも辞任するに値する行動です。企業組織において、そんなの許されてはいけないのですよ。反社会的勢力への取り組み姿勢と同じです。
片方でコンプライアンスの順守を徹底させるとか言っている人間が、自分はパワハラを横行させているというのでは筋が通りません。
これはつまり、無法者のジャイアンが横暴を働きながら「みなさんルールを守りましょう」という呼びかけをしているというお笑い的構図になっているわけです。会社内で遭遇すると、きっとぜったい笑えません。
まぁそもそも、吉本興業の社内ルールがスカスカというのが「労働環境」の項目の問題の源泉でもあったわけですが、そのあたり引っくるめて「吉本興業はガバナンスがボロボロですね」という診断にするならば、これはトップを替えなくてはいけません。
【追記:なお、岡本社長は「ガバナンス」という言葉を知りませんので、適宜言い替えて説明するようにしてください。彼は「ガバナンス」と「コンプライアンス」を混同しているようです。ただし、私は私で自分の「ガバナンス」の使い方が日本社会で浸透している認識と同じものなのかどうか確証はありませんので、それなりに意味を類推できそうな文脈で使ったつもりでいますが、よくわからなければ「企業統治、管理、支配」ぐらいの意味で読んでいただければと思います。これを刷新しようという場合は、トップダウンで取り組んでいく必要があります】
岡本社長が辞任するというのが一番わかりやすい展開ですが、そうでなくても降格させて、外部のプロフェッショナル社長を迎えて抜本的な組織改革を行うというやり方もありだと思います。
日本の超閉鎖的な芸能事務所の経営なので、ふさわしい役者を見つけるのはむずかしいだろうと思いますが、ほかの大企業でも社長をしたことがあって、ガバナンスを立て直した経験がある人を探すのは、不可能なことではないでしょう。
会見中、岡本社長は何度も「私の不徳の致すところです」というセリフをおっしゃっていましたが、それは少なくとも現行の体制では、吉本興業の社長業を行うのに「私ではふさわしくない」と言っているのと同義だと思います。
社長交代が望まれますが、そうでなくとも、そうでないとするならば、強力なサポート体制が必要であるということは、火を見るより、録音テープを聞くより明らかでしょう。
あと、能町みね子さんがツイッターで「大崎会長引っ張り出さないとダメ」と書かれていましたが、その通りだと思います。
記者会見見れてないけど、岡本社長叩かれるのはまあ想定内なんですけど、大崎会長引っ張り出さないとダメだと思います。日大が田中氏を断固出さずに逃げ切ったのと同じになると思います。
— 星空の能町みね子 (@nmcmnc) July 22, 2019
岡本社長も会見で、「現場の責任者は自分だが、要所要所では大崎会長の意見を聞いて、意に沿う形で対応を進めてきた」という意味のことをおっしゃっていました。その認識を反映させるなら、大崎会長がこの会社のガバナンス不全の責任者であると見なすのが適切でしょう。
【追記:そもそも減給処分を受けていましたね=吉本興業としては、大崎会長に岡本社長と同等程度の責任があるという認識だということ】
両者の辞任ということだけが唯一の道とは考えませんが、辞任しない場合は、辞任する場合と同じくらいの変化変革が必要になるだろうと思います。
また、宮迫氏には「会社にふたたび戻ってきてもらえるよう、そのための話し合いのテーブルに着いてもらえるようにお願いしていきたい」という話でしたが、岡本社長に恫喝された宮迫氏と田村亮氏が完全復帰するためには、パワハラ加害者である岡本社長の姿はそこにあるべきではないでしょう。
【追記:ガリットチュウ福島氏とレイザーラモンHG氏も同じ部屋にいて恫喝されたのでした】
やっぱり、辞任か、左遷しかないように思います。
業界の流動性を高めるために、大崎会長、岡本社長が辞任して、あらたな会社を立ち上げるというのもあるといいのだけど、なんて思っています。
さて、どうなるでしょうか。