強い息吹には強いエネルギーが宿るという
ヨガの先生が、「インドには強い息吹には強いエネルギーが宿るという考えがあります」 と言った。
それを聞いた俺は、次のインタビューで使えそうだと思った。
現在俺は絶賛就職活動中。しかし、英語のインタビューがむずかしすぎて、もう一年近く状況を変えられないでいる。
もともと俺はインタビューみたいなことが苦手だ。
メンタルが弱くて、そういう場面でのドキドキが止まらないからだ。緊張のせいで思考能力が落ち、パフォーマンスも落ちる。
対策として、問答への準備をしっかりするというのがある。
想定される質問への答えはしっかり用意しておく。
本番では、一言一句違わずに言うというのもよくないので、120%〜150%分の回答を用意しておいて、それの7割〜8割を即興的に取捨選択して組み立てるようにしている。
もちろんその部分も成功するまで磨き上げていくわけだが、今現在は、作家としての自分よりも、パフォーマーとしての自分のほうが足を引っ張っているように思う。
「何を話すか」よりも「どう話すか」のほう。
そんな文脈にいたので、ビデオで繰り返し聞いているはずのヨガ先生の説教が、今回はじめて心に留まったのだった。
そんなことがありつつ、
先日ひさしぶりにファストフードのドライブスルーを利用した。
昼過ぎの時間がよかったのか列はなく、すぐに自分の順番になった。
古いスピーカーがガシャガシャと汚い音を立て、店員の言い慣れすぎてつんつるになった言葉を伝える。
「こんにちは。ご注文をどうぞ」
順番待ちがなく、考える時間もなかったので、こういう状況だと「えーっと、うーっと」などと言って長く考えることも多いのだけど、この日は食べたいものがあってきたので、そういう失態は演じなかった。
オーソドックスな1番のコンボをコーラで頼む。チーズバーガーで。
瞬間、軽い緊張が走る。
うまく伝わるだろうか。
メンタルの弱い俺とはいえ、ごく軽い緊張である。
あ、そうだ。強い息吹を使おう。
インドの奥義をいいタイミングで思い出せた。
「1番のコンボを、チーズ付きで、コーラでお願いします」
言えた。
はじめてのことなので若干ぎこちなくなったが、バシーンと力強く言えた。
店員が言う。
「1番のコンボを、チーズ付きで、飲み物はコーヒーでしたね」
いや、ちがうちがうちがう。
「ちがいます。コーラです」
「おお、コーラですか」
ということがあった。
まだまだ修行ははじまったばかり。
道のりは長いが、地道にがんばっていくしかない。