じんじんする日々

気をつけているつもりでも、その「つもり」が及ばないところで、じんじんは日常的に生産されてしまう

映画『ブラインドスポッティング』関連インタビュー その2

フロリダは今日も暑いです。冷たい水を水筒に入れて持ち歩いていたのですが、屋根のない駐車場に停めた車内に放置していたら、見事に白湯になっていました。

当たり前の話ですね。

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さて今日は、昨日に引き続き、3日前に鑑賞した「Blindspotting」というカリフォルニア州オークランドを舞台にした映画について、さらに広げていきたいと思います。

 

<オフィシャル・トレイラー>

www.youtube.com

 

<過去の関連エントリー>

『ビラヴド』トニ・モリスン その10 - じんじんする日々

映画『ブラインドスポッティング』関連インタビュー その1 - じんじんする日々

 

今日取り上げるのは、ローリングストーン誌のインタビュー記事です。

For ‘Blindspotting’ Creators Daveed Diggs and Rafael Casal, There Are No Easy Answers – Rolling Stone

 

いくつか特に興味を持った部分を引用しつつ、ご紹介していきます。

 

If there is one thing to take away from Blindspotting (opens nationwide July 27th), the forthcoming film from co-writers, co-stars, and longtime friends Daveed Diggs and Rafael Casal, it is that a person’s context matters.

まずは冒頭の一文から。この記事でも、昨日の『ザ・デイリーショー』同様、主役のふたりに話を聞いています。ここでは、ダヴィード・ディグスとラファエル・カサールのふたりが、ともに出演者であるばかりでなく、共同執筆者でもあり、古い友達であることをサラッと紹介しています。

  

Diggs, 36, and Casal, 32, spent nearly a decade writing the script together. They first met at a poetry event at Berkeley High School; from that moment on, Casal says, “any artistic project one of us was involved in, the other was involved in.”

ふたりは4歳違いなんですね。出会いはバークレー高校で開かれた詩のイベントだったそうです。『ザ・デイリーショー』でも説明されていましたが、今作の執筆には9年もかかったとのこと。その時間を通して、ふたりの絶妙なコンビネーションが磨かれていったのでしょう。

 

Blindspotting’s title is borrowed from a mnemonic Collin’s ex-girlfriend, Val (Janina Gavankar), comes up with to remember a “Rubin’s vase” while studying for a psych test.

さて、題名の『ブラインドスポッティング』ですが、これは有名な「ルビンの壺」に関連した心理学用語からきています。Wikipediaの言葉を借りると、「ルビンの壺では白地(つまり壺のように見える部分)を図として認識すると、黒地(つまり2人の横顔のように見える部分)は地としてしか認識されず(逆もまた真である)、決して2つが同時には見えない」という現象のことです。

 

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The term comes at a crucial point in the film: Collin feels he can’t escape his criminal past no matter what he does, thanks to his skin color and the way he wears his hair, and Miles finds that his whiteness obscures his Oakland authenticity. 

黒人には黒人の不都合が、白人には白人の不都合がある。一般的には、黒人の不都合のほうが深刻であると考えられ、問題視されますが、この映画では、白人にとっての肌色の不都合というものも描かれています。

 

“There are plenty of things that you don’t see that you don’t necessarily have to,” Diggs explains over his cocktail. “You’re not conditioned to see them. But if you want to, you just have to do the work to look a little bit to your right or left and actually look at what’s going on.” 

黒人主人公コリンを演じたディグスが言います。

「見なくても済ませられる社会の不都合ってものが、この世にはたくさんありますね。我々は、それらを見るようには仕向けられていません。 それでも見たいと望むのであれば、角度を変えてみるなど、見るためのちょっとした努力をして、実際に何が起こっているのかをその目で見ればいいのです」

社会の初期設定を越えていけ! ということでしょう。

 

以下、映画のクライマックスシーンの解説なので、特にネタバレ注意です。

In one memorable scene, Miles and Collin go to a friend-of-a-friend’s house for a party. [...] Everyone there works for a big tech company, and the host, who is from Portland, Oregon, calls them “homies” and asks if they want “drank.” Miles turns violent when a black party guest — presumably a gentrifier himself — hears Miles speak and tells him, “you don’t have to act ghetto to hang out here.”

マイルズのコリンが、友達の友達のパーティーに行くと、そこは超テックカンパニーの超ジェントリファイアーたちのパーティーだったんですね。そこの数少ない黒人参加者のひとりが、白人のマイルズが喋るのを聞いて、「君ね、このパーティでは、なにも必死になって、黒人ゲットー風の喋り真似なんてしなくてもいいんだぜ」などと言って、センシティブになっているオークランドローカルの神経を逆撫でしてきます。で、それによってローカルさん、ブチ切れます。

 

Casal says the ensuing fight “feels so jarring, mostly just because it’s in a space where everyone felt safe a second ago. But the reason Miles goes there is he’s in the same street he’s always been in and violence has always been right around the corner. That’s why that moment is so tense. It’s like this massive culture clash of a new life sitting on top of an old.” But it’s also a reinforcement of racial power in the city: “authentic” Oakland as he may be, Miles becomes just another white man who can inflict violence on a person of color and get away with it.

カサールさん、昨日とりあげたインタビューに勝るとも劣らない、味わい深い解釈を与えてくれています。

「マイルズがパーティで起こしたケンカがあれだけ不快に思えるのは、それまでそこにいた全員がそこは安全な場所だと思っていたからでしょう。でも、マイルズがそのパーティに参加したそもそもの理由は、それが彼の慣れ親しんだ場所ーーいつもバイオレンスと隣り合わせだった場所ーーで開かれていたからだったのです。だからあの瞬間はあれだけ緊迫したシーンになっているのですね。ニューライフがオールドライフを下敷きにして成り立っている、そんな壮大な文化衝突の様相を呈しています」

しかし、と記事は続けて、それは結局、白人のマイルズが黒人のジェントリファイアーに暴力を振るって、罰を逃れるという、古くから問題になっている人種問題をなぞるような格好になっている、ともうひとつツイストを入れてきます。

 

重いし、深いーーー。

 

この問題は、簡単ではありません。

黒人でも白人でもない、アジア人な我々には関係の薄いことと思えるかもしれません。

でも、これもひとつの現在進行形の社会の問題です。

もしも見たいと思うなら、しっかりその目に焼き付けてほしいです。その価値のある映画だと思いますよ。

 

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▲色使いが格好いいポスターを見つけました。 

 

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